「珪くん、ポットにコーヒー入れてどこへ行くの?」
キッチンでモカをドリップしながら、が俺に問い掛けた
明日から連休、久しぶりに二人ともゆっくり出来る・・・
今夜はが俺の家に泊まる・・・その予定で今夕飯を食い終わったところ
でも、俺の中ではもっと違う予定があって
少し早い夕飯を二人で食ってから
『モカをポットに入れてくれ』
にそう頼んだ
は・・・高校時代からスタジオ横の喫茶店でずっとバイトしてて
もちろん、大学生活の今でも、それは変らなくて
のいれてくれるコーヒーは・・・本当にうまい
たまには・・・自分でもコーヒーを落としたりするけれど
の作ってくれる味には遠く及ばない
「これから・・・ドライブ、出かけるぞ」
「え?本当?!」
「ああ・・・久しぶりに二人で休めるんだし・・・
たまには出かけるのもいいだろ」
「ドライブなんて、初めて!!あ・・・でも、車は?」
「レンタカー・・・、駅前のレンタカー屋で借りてきた・・・裏庭においてある」
「すっごーい!珪くんの運転する車に乗るなんて、夢みたい!
でも、運転出来るの??珪くん、大丈夫?」
「はは・・、俺だって免許くらいは持ってるぞ
でも、普段は車の運転なんて・・・する必要も無いからな」
「うん、はばたき市は電車もバスもいくらでもあるし
第一、珪くんはマネージャーさんの送り迎えだもん
自分で運転なんて必要ないもんね」
「ん・・・、でも、せっかく免許も取ったんだし
を連れて出かけよう・・・そう思ったって、いいだろ?」
俺がそう言うと、は本当に満面の笑みで俺に抱きついてきた
「ありがと」そう言って俺の頬に可愛くキスをくれた
俺は・・・ほんの少し照れながらも・・・まんざらでもない
「じゃ・・・、コーヒーできたら、出発するぞ」
「うん!すぐに作るから、もうちょっと待ってて」
は鼻歌交じりに・・嬉しそうにドリップを続けた
俺は・・・出かける「準備」を整えて
庭に下りて、借りてきた車のエンジンをかける
木枯らしが吹く・・・12月
時刻は午後6時を少し回ったところ
俺たちは、北へ向かいはばたき市を後にした
「珪くん、CDはどれがいい?」
「ん?おまえが好きなのにすればいい」
「えっと、それじゃ・・・これ!」
が持ってきたCDがセットされて・・・
スピーカーからマライアキャリーの高音の歌声が流れ出す
クリスマスソングがはいったアルバムは
今月ののお気に入りだ・・・
車は・・・首都高速に入り
車窓から・・・はばたきタワーが見えた
前の車のテールが、あわただしく流れてゆく
「眠らない街」を走りぬけ
俺は東北自動車道を目指した
「ねえ、珪くん、この車ってなんて車?」
「さあ・・・、よく知らない」
「私の知識が間違ってなければ・・・、BMWって外車らしいんですけど」
「ふ〜ん」
「ふ〜んって、さすが珪くんだわ」
「レンタカー屋であれこれ見たけど・・・この車がオープンだったから」
「え?これって、オープンカーなの?」
「ああ・・・、屋根が動くらしい・・・開けてみるか?」
「え?運転中にそんなことしたら危ない危ない」
はそういって、目を丸くして顔を横にぶんぶんと振った
相変わらず何事も大袈裟なやつだな・・・
でも・・・のそんな様子が可愛くて
いつも・・・こいつから目が離せない
しばらくの間・・・はいろいろと一人で話し続けた
もっとも、俺が「うん」とか「ああ」とかしか返事をしないのはいつものことで
それでも・・・は嬉しそうに、その日の出来事や面白いネタ話を話す
そんな楽しい時間が2時間ほど過ぎると・・・
昼間ずっとバイトで立ち通しだったは
足元から出てくる温かさに負けて・・・少しずつ眠たそうになってきた
「・・・シート倒して寝てていいぞ」
「でも、珪くん運転してるのに、寝たら悪いよ」
「気にするな・・・、着いたら起こすから少し休め」
「本当にごめん、お言葉に甘えてちょっとだけ寝るね」
は・・・・膝掛けにしていた毛布を肩口まで引っ張ると
3分もしないうちに夢の世界に旅立ってゆく
俺は・・・CDの音を絞って暗闇の高速道路を走り続ける
ゴトン・・・ゴトン
規則的に繰り返される・・・路面の振動
車は快調に北を目指す・・・
出口表示「那須高原」で、高速道路から降りた俺は
那須高原温泉街を通り抜け
さらに・・・山奥・・・那須岳山頂を目指した
はばたき市を出発してから・・・すでに3時間
が眠ってしまってから・・・1時間が経って
ようやく目的地に到着した
誰もいない・・・山頂の駐車場で車をとめ
リアシートにおいてあった毛布を取り出して
俺は・・・フロントパネルのボタンを押す
かすかな機械音とともに・・・ゆっくりと車の屋根が後ろに動いた
そして俺は・・・・自分のシートも倒して・・・
隣で可愛らしい寝息をたてているの頬をつついた
「・・んっ」
「・・・起きろよ」
「ん?珪くん・・・」
「着いたぞ・・・」
は・・・眠たそうに目をあけると
俺の顔を見詰め「おはよう」そう呟いた
俺は・・・を引き寄せて・・・そっと唇を重ねた
そして・・・の髪をゆっくりと撫でた・・・
「目・・・覚めただろ?」
「うん」
「に・・・俺からのプレゼント」
「え・・・?」
俺は何も言わずに・・・天を指差した
は指先の方向を見ると・・・声を失った
そこには・・・人工的な光から隔絶された・・・満天の星空が広がっていた
山から眺める星は・・・まるで、手の届く近くにあるように・・・
キラキラと・・瞬いていた
「すごい・・・綺麗・・・」
「ん・・・この星は・・・少し気が早いけどクリスマスのプレゼント」
「珪くん・・・、星を見るために・・ここまできたの?」
「ああ・・・おまえの喜ぶ顔・・・みたいから」
俺はそう言うと・・・の頬にキスをした
そして・・・は・・・
本当に照れくさそうに・・・俺の唇にキスをくれた
「珪くん・・・、愛してる」
「ん・・・俺も」
俺たちは・・・互いの温もりを感じながら
何も言わず・・・ずっとずっと星空を眺めた
12月の山の風は・・・冷たくて
毛布が無ければ凍えそうだったけれど
がいれてくれた・・・ポットのモカを飲みながら
俺たちは心も身体も・・・温かだった
「・・・そろそろ次の目的地に行くか?」
「え?まだ行く場所があるの?」
「ここまできたんだから・・・せっかくだから温泉入るだろ?」
「本当?!嬉しい!
でも、もうこんな時間だよ・・・」
「予約・・・ちゃんといれてある」
「え?!本当に?」
「温泉街のはずれにある・・・小さなペンションだけど・・・
23時までにチェックインしてくださいって、そう言ってたから、まだ大丈夫だ」
「・・・珪くん、もう、大好き!!」
そう言うと、は俺に抱きついてきた
この言葉が聞きたくて・・・俺はいつもこんなことをしてを驚かせる
それが・・・本当に嬉しかったりするから・・・
俺たちは「幸せ」・・・だろ
これからも・・・こうして
いつまでも「幸せ」を感じられる俺たちでいよう・・な
END
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